月曜日。大学の正門前で、助監督・久田喜代子(前田愛)が携帯電話を掛けている。文学部の授業<映像ワークショップ>のカリキュラムで製作される映画『タイクツな殺人者』の主演俳優が突然役を降りてしまったのだ。クランクインまであと5日。一刻も早く代役を探し出さねばならない。監督の松川直樹(柏原収史)を始め、撮影担当・本杉(阿部進之介)、制作担当の上村(鈴木淳評)、美術担当で社会人学生の大山(田口トモロヲ)、指導教授で元映画監督の中條(本田博太郎)が続々と姿を見せた。代役の候補に上がっているのは、演劇サークルの風変わりな青年・池田哲哉(中泉英雄)。稽古中の舞台に乗り込み、なんとか出演の了承を取り付けた。

一方で個々で恋愛・就職などの個人事情も抱えていた。松川には、長い間別れられない恋人のユカリ(吉川ひなの)がいる。彼を熱烈に愛し、執拗につきまとうユカリ。松川を追いかけ、彼のいるこの大学に転入までしていたのだ。結婚話まで持ち出すユカリにうんざりしながらも、裕福なユカリに借金までして、別れることは出来ない。山岳部の西浦(玉山鉄二)と付き合っていつ久田は、合宿に出発する西浦を見送りに行く。冷やかし半分でそれを見ている本杉たち。だが本心は嫉妬に燃えているのである。

翌日から怒涛の日々が始まった。映画の原作は、実際に起きた高校生による老婆殺人事件を題材にしたノンフィクション「退屈な殺人者」。“一度人間を殺してみたかった。殺したらどうなるか実験してみたかった”という主人公の心理解釈を巡って、松川と久田は激しい議論を戦わせる。民家に侵入し老婆を殺害したとき、少年の精神状態は「異常」か「正常」か、一体どちらだったのだろう。スタッフルームに集まった製作の吉崎(伊崎充則)、助監督の中根(金井勇太)、スクリプターの綾(たかだゆうこ)らも準備に奔走している。

学生たちを穏健に見守る指導教授・中條も、陰では学生たちにアッシェンバッハ(『ベニスに死す』でダーク・ボガードが演じた作曲家)と揶揄されている。かつて映画監督として鳴らした彼は、15年前に現場から遠ざかり、今では大学の教授として学生に映画を教えているのだ。私生活では2年前に妻を病気で亡くして以来、孤独な日々を送っている。しかし彼の視線の先には、最近密かに淡い思いを寄せる美しい女子大生レイ(黒木メイサ)がいた…。


HOME